書評
本書のタイトルが少々気になって好奇心で読んでみたが、タイトルの最後にあるように仏教宗派の解説書といった感じの本であった。私自身も、父の葬儀を営むまで、あまり自分の家の宗派を気にすることはなかった。今後も私のような者がさらに増えていくであろうが、最低限の常識として、日本の仏教の成り立ちや現在にいたるまでの変遷を理解するのも良いかもしれないと思い、最後まで読み進めた。
本書では、日本の主な宗派の成り立ちや歩み、特徴、さらには他の宗派との関係や社会へ与えた影響などが宗派ごとに解説されている。その中で、私自身が興味深かったのは、下記の点である。一つは、カリスマ性のある宗教家は仏教に限らず、キリスト教などにおいても、自らの教えを本人は直接残さないのが通例で、その生涯の事績を含めて、弟子たちがまとめ上げ、伝えていくことが多いということ。二つ目は、葬式は曹洞宗から生まれたもので、それが他の宗派にも伝わったそうだが、当初、日本の仏教は、葬儀とはまったく関係がなかったということ。三つ目は、日本人が所属する宗派は、家を単位として決定されるが、それは日本が「家社会」であることが反映されており、都市部では菩提寺と檀家関係を結ばない家が増えているが、宗派は各人のルーツとも関係しており、そう簡単には宗派意識は消えないだろうとのこと。しかも、こうした宗派とのかかわりは他の仏教国には見られないそうで、日本独特だそうだ。
仏教の宗派の対する私個人のイメージは、その時代時代の権力とのつながりや、それを通しての経済基盤の確立によって、その勢力を競ったために争いも多かったというものだが、そのあたりについては本書にも記載はあるが、特に詳しくは書かれていない。全体的には、仏教各宗派の歴史解説という感じでまとめられているので、入門書として丁度良いかもしれない。ただ、学生時代に日本史のテストでまともな点数を取ったことがない私には、日本史の授業を受けているようで、少々きつかった。
(by おやじ1号)