相続や介護に関する不安を解消 ~ 渋谷の司法書士と作りました ~

「医者の世話にならない生き方」

書評

 3年前に父ががんと診断され、今年亡くなるまでの間に、私自身、最新医療と父のQOL(quality of life)のバランスをどうとるかについて、何冊か本も読み、母とも色々と相談してきた。今回ご紹介するこの本は、心臓外科医としてキャリアをスタートし、医者、医学者としてのキャリアの大半を最先端医療の探究に費やしてこられた著者が、最後にたどりついた医療とのつきあい方を分かりやすく説明したものである。体の不調も増えてくるアラ還世代の我々が、改めて医療とどうつきあうかを考える上で非常に参考になる書籍である。

 著者によると、近年の医学の進歩は目を見張るものがあるが、医学で治せることよりも、治せないことの方がずっと多いとのことである。その理由としては、人の体は一人ひとり異なっており、万人に効く治療法というものはない点、また、診療科が細かく分かれ専門化が進む流れの中で、体全体を診ることができる医師が少なくなってしまった点があげられている。そのような状況の中で、我々の医者、医療に対する期待は非常に大きなものになっており、疾患ごとの名医のランキングなどが雑誌やインターネットで頻繁に取り上げられている状況である。

 本書では、上記に述べた大きなギャップを埋めるためには、一人ひとりが、今の医療には限界があることを理解し、医者に任せることと、自分で自分の面倒を見ることを頭に入れたうえで、自分の体を養っていくことが大切であると説明している。具体的には、マイドクターの大切さ、薬とのつきあい方、検査の受け方など自分の面倒を自分でみる方法、老化に対する考え方、がんとのつきあい方、近代西洋医学と一緒に鍼、灸などを含む伝統医学、相補・代替医療を活用する統合医療、などについて分かりやすく説明している。

 国民の年間の医療費増大が何度となくニュースに取り上げられる今、医者の世話にならない生き方というのは、未来の世代のためにもなり、またそれ以上に、自らが健やかで幸せな人生をおくるための生き方と言えよう。本書の表紙に、著者の写真が使われている。手塚治虫とは中学時代の同級生で、『鉄腕アトム』のお茶の水博士のモデルの一人となった著者のその写真をみると、ついついこの本を手に取ってしまう。

(by おやじ1号)

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