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コラム(第3回) やっぱり大変!相続体験談(その2)

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 前回のコラム『やっぱり大変!相続体験談(その1)』に続き、私自身の実体験を皆様にお伝えしたいと思う。今回は、主に金融機関、特に銀行での手続きについての経験談である。

 まず、大きな流れとしては、被相続人が取引をしていた金融機関に亡くなったことを伝えると、相続に関する手続きの案内(相続に必要な書類などが記載されている)が郵送されてくる。その案内に従って、必要書類を全て揃えて金融機関に提出すると、書類に過不足などなければ1~2週間程度(金融機関で差がある)で、手続き完了の案内が郵送され、指定した口座に解約されたお金が振り込まれる(払い戻しの場合)という流れである。銀行によって若干の違いはあるが、ゆうちょ銀行含め、私が対応した6行の銀行では、ほぼ同じ流れ、およびほぼ同じ書類で手続きができた。尚、噂では聞いていたが、最初に金融機関に連絡を取った時点で、その金融機関にある被相続人の全ての口座が凍結されてしまう。その後、電気代などの自動引き落としになっている支払いが全て出来なくなるので金融機関への連絡は、支払い関係を把握してからでも良いと思われる。また、金融機関どうしの連絡は無いようで、今回、一つの銀行だけ手続きが遅れたのだが、こちらから連絡するまでは凍結されることもなく、自動引き落としなども継続して行われていた。

 以下では、金融機関での手続きで気づいたことを順に示していくが、その前に一つ触れておきたいことがある。それは、残高証明書についてである。体験談(その1)に書いた通り、今回、相続税の申告が必要かもしれないという事で、遺産分割協議書を作ることになり、司法書士の井手さんから、各金融機関で口座毎の残高証明書(被相続人が亡くなった時点での残高)を取ってくださいと指示があった。そこで、金融機関に最初の連絡を行った際に、その都度、残高証明書の発行について確認した。

全ての金融機関で準備を求められたのが、下記の5つのものであった。
①  通帳 
②  被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
③  被相続人と自分(相続人)の関係が分かる戸籍謄本
④  自分(相続人)の印鑑証明書
⑤  実印

これらを持って、金融機関で残高証明書の発行依頼書を書いて提出すると、数日後には残高証明書が郵送されてくる。金融機関からの案内に基づいて、払い戻しの必要書類を全て揃えた後、金融機関に手続きに行く時に合わせて、残高証明書発行の手続きを行うのが効率的かと思う。

被相続人の戸籍(除籍)謄本の入手

 金融機関からの相続手続きの案内を入手すると、どの金融機関でも、下記の書類を求められた。

① 被相続人の戸籍(除籍)謄本
② 相続人全員の戸籍(除籍)謄本
 注)相続人となる人が既に亡くなって、その子供が相続人となる場合には、亡くなっている人の戸籍(除籍)謄本も必要
③ 相続人全員の印鑑証明書
④ 相続手続きの依頼書(呼び方は金融機関によって異なる)
⑤ 遺産分割協議書(作成した場合)
注)今回は、遺言が無かったが、遺言がある場合には、遺言書などの提出を求められる。
⑥ 通帳とカード
 
 まず、被相続人の戸籍(除籍)謄本であるが、金融機関によって、「婚姻(未婚の場合は16歳)から死亡までの連続したもの」を必要とする金融機関と、「出生から死亡までの連続したもの」を必要とする金融機関があり、統一されていない。(ちなみに、不動産登記の場合は、出生から死亡まで必要なので、不動産をお持ちの方は「出生から死亡まで」の戸籍(除籍)謄本を取得した方が良い。)また、戸籍は昭和32年および平成6年の法務省令により改正が行われており、この改正時に新たに編成された戸籍には、その時点で戸籍に在籍する人のみが転記されているとのことで、婚姻等により除籍されている人が存在する場合は、改正後の戸籍謄本のみでは除籍されている人の確認ができないという事情がある。こういった事情に注意して、役所で入手する必要があり、金融機関によっては、役所でこのように入手してください、といった資料を準備してくれている場合もある。

今回、叔父の相続にあたっては、配偶者は先に亡くなっており、子供もおらず、兄弟とその子供が相続人になったのだが、その場合には、他に兄弟はいないのかを証明するために、叔父の両親の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本にまで、さかのぼって入手することになり、司法書士の井手さんに入手をお願いした。実は、自分でやりかけたのだが、全てが揃うまでに何度も役所と電話と郵便でやりとりをすることになると思い、諦めたという訳である。

相続人全員の書類を入手する

 体験談(その1)に書いた通り、今回、叔父の相続については、手続き中遺産分割前に、相続人であった叔父の兄弟2人がなくなった。相続人が亡くなると、その亡くなった人の相続人(配偶者や子供など。詳細は、本サイトの『相続人の相続順位と法定相続分』をご覧ください。)が新たに相続人になる関係で、叔父の相続人はなんと10名ということになった。その全員に、戸籍謄本や印鑑証明などの入手をお願いして過不足なく集める必要があった。また、相続人の一人が、成年被後見人であり、成年後見人(今回は、息子であった)を確認するために、法務局発行の登記事項証明書と成年後見人個人の印鑑証明書も必要となった。更に、思わぬハードルが。叔父の相続人であった私の父が亡くなった関係で、私の母と兄も相続人になったのだが、兄が仕事の関係で中国に赴任中で、印鑑登録がなく印鑑証明書が出せないということが判明。確認したところ、中国にある日本大使館・領事館でサイン証明書及び在留証明書の発行を受けて提出すればよいとのことであった。兄に確認したところ、4月の異動で日本への帰任が決まったとのことで、今回は帰任を待って対応してもらうことにした。

普通そうだと思うが、基本的には相続手続きに明るい人は非常に少ないと思う。その中で、関係者全員の書類を揃え、さらには関係書類に全員の実印を押してもらうなんてことになると、時間も手間も相当かかると思った方が良い。また、司法書士の井手さんによると、「相続人が増え、相続人が被相続人と遠くなればなるほど、遺産分割協議はまとまりにくくなります。相続は棚ぼた的にお金が入ってくるので、相続人以外(配偶者や相続経験者の友人など)が余計なことを言ってきて、結局、法定相続分で分けることになる、ということが良くあります。ですので、相続人が増える前に相続手続き、特に遺産分割手続きは早めに行うことをお薦めします。」とのことであった。

 尚、上記以外にも、次のようなことが分かった。

・金融機関に出す戸籍謄本や印鑑証明は、コピーを取って返してもらえるので、1通で対応可能。
・金融機関によっては、口座のある支店でしか処理できない場合や、相続専用のセンターで集中的に処理する場合があり、郵送で対応するなど、時間がかかる。
・金融機関によるが、各種の申請書類を提出する際に、相続人の直筆である必要があったり、電話での本人確認があったりするので、対応できない場合は成年後見人をたてるなどの対応が必要になる場合がある。
・預貯金の解約で使う印鑑証明書や戸籍(除籍)謄本は、発行日から6ヶ月以内という条件が付いている場合が多く、注意が必要である。(今回、兄の帰任を待ったために、少々焦ることになってしまった)

  先日、新聞で、法務省が相続手続きを簡素化することを検討しているという記事をみた。それによると、最初に書類一式を登記所に提出すれば、その後は登記所が発行する1通の証明書の提出で済むようになるという内容らしい。とは言っても、揃えなければいけない書類は変わらないと思われるので、やはり早めに対応を始めることをお薦めしたい。

(by おやじ1号)

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