書評
まず、この本のタイトルを見て、なんて重いテーマの本だろうかと思った。そして中をパラパラと読んで、その通りの本に違いないと確信した。だが、読み終わった時には、何かすっきりした気分というか、少し気持ちが整理できた気がした。
本書は、34歳の大腸がんの手術を専門とする外科医が、日々、患者さんの死に接する中で、どうしても伝えたいと思ったことを書いたものである。34歳の若造に何が分かるのかといった批判や、生命保険会社の宣伝かと思うような一部の記述が気になるとか、けちをつける人もいるかもしれないが、普段は考えない、あるいは考えようとしない、自分や家族の死というものについて考えるきっかけとしては、とても良い本ではないかと思う。
本書の中で、医学の目的は、命を延ばすことではなく、人を幸せにすることではないかと述べている。しんどい副作用があっても長生きしたい人もいれば、苦しかったり痛い治療は嫌だと言う人もおり、幸せのかたちは人それぞれだと。私も昨年、がんで父を亡くしたが、父の世話をしていた母から抗がん剤のやめ時を相談されたときに何冊か本を読み、最後は父の気持ちを確認するように伝えたのだが、そのあたりが良く分かる気がした。
本書では、「人は誰しもいつか必ず死ぬ。しかも突然に」ということをイメージすることで、死に対する気持ちも変化するとある。また、その上で、少しでも幸せな死をむかえられるように、「きっといつか」はもうやめて、今を生きることが大切とある。私は、昨年、父の死に接したことで、この本に書いてあることがすんなり入ってきた。
(by おやじ1号)