家族信託とは、財産を持つ方が信頼できる家族や親族に、自分の財産の管理や処分する権限を託すという財産管理の仕組みです。平成19年に施行された改正信託法によって、高齢者の財産管理や遺産の承継に信託を利用しやすくなり、最近注目されている制度です。
基本的な仕組みは、「委託者」、「受託者」、「受益者」の3人で構成され、場合によっては「信託監督人」、「受益者代理人」が加わります。下記の図の通り、財産を持っている人を「委託者」と呼び、管理を任せる財産を「信託財産」と呼びます。その信託財産の管理を任せる相手を「受託者」と呼び、その財産から得られる収益を得る人を「受益者」と呼びます。下記の図では、委託者と受益者が別の人になっていますが、委託者と受益者が同一人物になる場合もあります。尚、受託者は、個人でも法人でも、また専門家でも素人でも誰でもなることができます。
信託財産が不動産の場合、登記簿には不動産の管理を行う受託者の名前が記載され、受託者が形式的な所有者になります。ただ、これは所有権が移ったわけではなく、受託者が所有者として、不動産の管理や処分を行うことができるということになります。所有権は移っていませんので、贈与にはなりません。もちろんそこからあがる収益は、受益者が得ます。
家族信託は、一部の専門家しか扱っておらず、普及には時間がかかりそうですが、家族あるいは一族で財産を守っていく有望な仕組みの一つになると思われます。