事業承継は、資産の分割にも関わる上、自社株の株価対策と後継者への移転、さらに何より重要なのが後継者選びということになります。ここでは主に非上場の中小企業の事業承継について、自社株の株価対策と後継者への移転について概要を説明します。
まず、自社株式の評価方法ですが、通常、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の組み合わせで評価されます。類似業種比準価額方式では、類似業種の上場企業と、配当、利益、純資産の3点で数値を比較し評価します。純資産価額方式は、帳簿上の純資産価額に含み益の一部を加えて評価します。その際のポイントは、類似業種比準価額方式の計算上、利益が配当や純資産の3倍の重みづけがなされる点です。従って、例えば被相続人である創業者に退職金を支払うことで、その年の利益を下げ、そのときに自社株を後継者に生前贈与するなどの方法が考えられます。
それから、中小企業の事業承継について2015年1月から使いやすくなったのが、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度です。本制度は、2009年に創設された制度で、中小企業の経営者が後継者に株式を生前贈与したり、後継者が株式を相続した場合に、一定の条件を満たせば、贈与税は全額、相続税は課税価額の80%が納税猶予される(いずれも対象株式は後継者が既に保有しているものを含めて3分の2まで)というものです。さらにその後、後継者の死亡等によって猶予された税額が免除されます。
ただ、従来は適用条件が厳しく、あまり利用されなかったのですが、2015年1月以降、この適用条件が緩和され活用しやすくなりました。以下は、その主な条件緩和の例です。
① 贈与の場合、従来は贈与時までに先代経営者は役員を退任する必要があったが、改正後は代表権を有していなければ良く、役員として残ることが可能になった
② 贈与または相続の場合、従来は先代経営者の親族が後継者であることが条件であったが、改正後は親族以外、例えば従業員から選ぶことが可能になった
③ 贈与または相続の場合、従来は承継から5年間、雇用の8割以上を毎年確保する必要があったが、改正後は5年平均で8割以上を確保すれば良いことになった
上記の制度以外にも、中小企業経営承継円滑化法による遺留分の特例や、特定事業用宅地や特定同族会社事業用宅地について、小規模宅地等の特例や相続時精算課税制度を利用するなどの方法がありますので、どういう組み合わせが有利か専門家に相談することをお勧めします。